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──薄情な世を厭って死を選んだ君の気持ちが、今ならわかる気がする。僕にも世の中を恨んでいた時期があった。君のように咲き誇ることも出来なかったけど、でも僕は死ななかった。……次こそは、君が生きやすい世の中となるように。
心の中でそう祈ると、陽一は咲良の手を取った。
「行こうか、咲良ちゃん」
「うん」
ゆっくりと校庭をあとにする2人の後ろで、鮮やかな花々に囲まれた名も無き植物は、静かにその可憐な花弁を風にそよがせていた。
≪完≫
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