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──俺は4月から高校生になる。新しい出会いと環境が待っている。もうここに戻ってくることは、ないんだ──
口数が少なく根が真面目で自己主張が控えめな陽一は、中学2年生の時に経験した両親の離婚という人生初の心胆を寒からしめる出来事をきっかけに反抗期へと突入した。
校内には様々な事情から健全な中学生としての道を逸れた一行のグループがあり、いつしか陽一もそのグループと行動を共にするようになっていた。
メンバーは深夜の徘徊、喫煙、刃物所持などの不良行為に手を染め、リーダー格の男子生徒の中には度を越した授業妨害を行って停学処分となる者もいた。
肝心な場面では勇気が出ず傍観に回ることの多かった陽一も、幾度となく補導された。
大人たちには縛られない。大人たちに一泡吹かせてやろう──若いエネルギーと退屈とを持て余し、青く衝動的な気概に突き動かされ、メンバーたちは反抗や反発行為を行うことに躍起になっていた。
行き場のないフラストレーションのはけ口を見つけるためにグループとの行動を漠然と続けていた陽一は、反抗と謹慎とを繰り返す不毛な日々を送るうちに、次第にメンバーたちの心の底にある思いに気付き始めた。暴力や暴言といった手法ではなく、もっと建設的な方法を身につけて、やがてみな社会に出て大人にならなければならない──それを誰もがわかっていながら目を背けている。それに薄々と気付きながらも、陽一はこのままでいいのかという煩悶と戸惑いを抱えたまま刹那的に毎日を過ごしていた。
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