真冬

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人の心の内の疑問を聴き、素直に応えると恐れられた。心の内の声が聴けるのは普通では無いと私が知る由もない。  そして同世代の子の身体は、同じように多少の痛みに耐えられると思っていた。ちょっと強く引っ張り少々の怪我をさせると、泣き叫んで逃げてしまうので私は驚いた。時には大人が顔を真っ赤にして、自分の子供に怪我をさせてどうしてくれると私に怒鳴りに来たのでさらに驚いた。  大した事じゃないのに?大騒ぎする意味がわからなかった。泣いたり騒いだり、関係の無い大人までもが怒ったりする方が滑稽ではないかと私は思った。  そして段々、周囲の人間は私を遠ざけた。私からしてみれば私以外の人間の行動が奇妙であり、興味深いものなのに避けられてしまうのが悲しかった。    時が経ち周囲の冷遇は変わらず、そんな風なら交わらず遠ざかるのは仕方のない事かもしれないと諦めた。  しかし、私と接してくれる人間は少数だが存在した。    両親と学校の先生。父は出張で家に殆どいないが、帰ってくるとご飯を何度か作ってくれた。母は帰ったり帰らなかったりで、酒の匂いがしない時は暴力は振るわない。気分が良いと少額のお金を投げてくれた。学校の先生は学校で問題を起こされると困るので、事前に私を呼びつけ注意をする。優しい言葉は心といつも違っていた。  これが小学生までの、私の人間関係の全て。
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