真冬

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小学校の高学年頃には、私は他人の思考を読んで求められる事をある程度受け入れて対処するようにしていた。例えば誰かが「渡辺真冬と組んで体操したくない」と考えれば体育の授業前に保健室に逃げ込んだ……。  誰かが考えた事を当てたりして目立ってしまうと大騒ぎになり面倒なので、隠すようになった。 それでも私は他の子らと馴染む事は無かった。  大抵の同世代の子は、私を嫌うか恐れていた。心の内から「近くに寄らないで!」という私に対する願いをキャッチするたび、私は人を益々避けるようになった。もはや、誰かしらに避けられたから傷つく……等という生易しいハートは無く、人に対して何の期待もなく諦めの境地に達していた。  最も、ずっと幼い頃から私が期待するほど未来や人は輝いていないと母から絶望を学んでいたけれど。
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