真冬

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私は山の多くの生物の中で蝶が特に好きだった。  ひとつ、ひとつ、同じ模様のようで違う羽。ヒラヒラ舞うように飛び、音もなく私の元へ集まってくる。口先にはストローのように丸まった管があり、滑稽で愛おしさまで感じた。  私は野山で集まってくる蝶とよく戯れていた。ある時、たまたまそこへ犬を連れた真琴が通りかかった。真琴は私を見つけると、私が蝶を集めているのを黙って随分眺めていた。 (どうやったら集まるんだろ?スゴいなあ)真琴の思考が私へ流れてくる。素直に驚いて興味を示していた。私が真琴へ意識を移すと、蝶は私から離れて行ってしまった。  真琴をじっと見つめると、私を恐がりもせず近付いて来た。「スゴいなあ!と思って見てたんだ」と、心の声と同じ事を言いながら……。  中学校の中では真琴も私も今までお互いの存在を知っていたけれど、接点もなく目を合わせた事すらなかった。真琴も私もどちらかと言うと、集団行動より自由に一人で行動する事を好んだから共通の知人もいない。  しかし彼女は頭脳明晰「神童」とまで言われ、一目置かれて友人も多く頼りにされていた。かたや私は近付くと呪われると噂がたつ「魔女」扱い。友人なぞ一人もいない。
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