真冬

15/29
前へ
/36ページ
次へ
私と「ジュンキチ」と「ソレ」はひとつになった。ただ、湖を漂うだけの生物に。しかし、懐かしさで私は昔住んでいた家にたびたび身を寄せた。人だった時の思い出は悲しい事ばかりなのに、何故か自分を理解出来ない。  ある日、家の中で父に姿を見られた。父は気を失ってしまったので、山の中へ逃げ帰った。後にわかった事だが父はこの時、心臓発作を起こし誰にも看取られず一人きりで亡くなっていたらしい。 私があの家に行くのを「ジュンキチ」は嫌がった。「ジュンキチ」は兎に角、湖から出たがらなかった。犠牲者を出したくないのだ。しかし、私は新たな身体や自分の能力が強くなるのを感じて色々な事を試したかった。    特に身体の形状を自在に変えられるのは興味深く、摂取した生物になれるのは面白い。人の形状になるには摂取量が少なく遺伝子情報が足りないのか、まだ無理だった。私の遺伝子情報に近いものを取り入れて、完成させれば扱いやすい身体を手に入れて自由に動ける。  誰を取り入れるか、それはわかっていた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加