真冬

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ある日……昔住んでいた家に再び行くと、新しい家族が引っ越してきていた。  幸せで美しい家族。  私は興味を持ち、天井裏からその家族を観察した。まるで私とは違う愛情をいっぱいかけられた子供達。  こんなものなのか?  普通とは家庭とは家族とは?  真琴と交流があった頃、よその家庭の事は話しで聞いていたけれど、私の受けた環境とはあまりにも違っていた。ご飯、学校で使う道具、洋服、布団、風呂、当たり前に用意されている。そして温かい会話が交わされる。  家族の中に私が人だった頃と同年代の女の子がいた。色白の肌、よく手入れされた綺麗な真っ直ぐの髪、大きな瞳に長い睫毛、細長い手足はきめ細やかな肌に覆われて昔の私のように肘や膝はガサガサしていない。美しい……そして家族に愛されている。彼女には3つ年上の兄がいて、彼女はとても慕っていた。    私は吃驚した。    世の中にこんな美しい男がいるものか、と。  美しい彼女は美しい兄にも愛されていた。    嗚呼、私が彼女だったなら! 私は恵まれている彼女……秋葉を妬んだ。  羨んだ。  憧れた。
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