真冬

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せいぜい、暴れればいい……  肝心な時に私は他の意識を抑止出来る力がある。私の駒を傷付けなければいくら暴れてもいい。  深雪は私が休んでいると、幼児の復讐をしに来た和美を襲い負傷させ、中途半端に生かした。  私は呆れた。 深雪は猫が鼠を手玉にとって、焦らしながら殺すように和美を痛めつけたのだ。しかも私が気に入っている美しい男、春海のいる高校で。これで春海の警戒心を増幅させ、落ち着いて話をするなどの願望は叶わなくなった。  がっかりした。  しかし深雪はその上で春海を捕らえようとした。我が母ながら獣のような所業に驚いた。  深雪を放置した事に後悔した。  その後和美は救急車で運ばれ入院した。しかし深雪は安心しきっていた和美をさらに追い詰め、殺害。深雪はあの生物と飢えを共有して、殺戮を好んでいた。  深雪が私の願いに従うわけがない。元々娘を気にかけた事などなく、自分本位な身勝手な女だ。  せいぜい、私に騙され罪を重ね化け物に成り下がるがいい。  深雪は、和美の病室に看護士が入って来た為に和美の胸から上を食い残した状態で逃げた。食い残した部分を惜しがっていたが、あまり騒ぎを広げたくない私は仕方なく意識を乗っ取り病院の外壁を這って逃げた。  途中、駐車場からこちらを見ている春海に気付いた。私は自分の浅ましい醜態をあの男に見られたくなかった。植え込みに隠れ急いで逃げた。  性懲りもなく深雪はまた春海を求めた。あの生物も本能で繁殖を目的としているから、飢えや欲を共有している深雪にも影響し、発情しているようだ。
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