真冬

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私が次に目を覚ました時、新しい私が誕生したと自覚したのは傍らに全裸の春海と真琴が居たからだ。暗闇の中で計画通りに私は産まれたらしい。そして私は分散した力を取り戻す為に暗闇を吸収した。真琴から生まれて人間により近くなった私は深雪やあの生物のような力はないが、暗闇から多少の力は得られた。  この身体の意識は望み通り私一人のもの。  私の嫌いな母と常に飢えて邪魔くさいあの生物を消せた。そして、望み通り秋葉の美しい姿で生まれ変わった。リスクは負ったが結果には満足している。  私はもう、渡辺真冬ではなく違う人間になれたのだ!  暗闇がなくなった天井裏には、私の子である春海と真琴と何故か刑事がいた。この刑事予定外だが……計画通り進んで気分の良い私は刑事を殺さず、捨てておいた。 (いつか山で、私が書いた日記を見つけて春海は真実を知るだろう…その時…私と最も近い春海…私を受け入れるのか?それとも……)  私は産まれた後、気を失ったふりをして春海に連れて行かれるまま身を任せ、考えていた。 私が少し驚いたのは、春海は既に以前の自分とは違う事を知っていた……思ったより早くあの日記は発見され、その内容が春海に知らされたらしい。私の予定ではもう少し時間をかけて、春海の正体を真琴に突き付ける予定だったが。  まあ、いい。  すべてが思い通りにならない事を我慢するのは慣れている。  春海は両親や真琴の家族に危険が及ばないように、産まれたばかりの私をアパートに連れて行った。すぐ殺そうとしないところを見ると秋葉の姿である事に躊躇しているのか、それとも私が春海の子にあたるからか?
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