真冬

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新しい私を、秋葉の姿とはいえ春海が必ず受け入れるとはいえない……だから私は保険をかけていた。どうしたって、あの生物の持つ強力な能力は春海のほうが濃く受け継がれており、私のほうが人に近く弱い。春海が攻撃してきたら危険だ。私はこのリスクを懸念していたが春海を欲しいという欲に負けて、このリスクを受け入れてしまった。  どうしても! 私の闇に引きずり込んででも……春海を私のものにしたかったのだ。  私の春海に対する保険とは、春海の両親と真琴の家族を生かした事だ。人質は多いほうがいい。春海に守りたいものがあるなら、それを利用しない手はない。案の定、春海は私を受け入れず私はアパートの五階から飛び降りて逃げる羽目になった。  残念だ。  とても、残念だ。  しかし、春海との事はこれから時間をかけていけばいい……もう過去は既に消し去り、大手を振って歩けるのだ。  新しい世界へ飛び立てる。  春海は直ぐに私を追ってきた。彼は「終わらせる」 と私に言った。私にしてみれば、始まったばかりの人生を終わらせるつもりはない。  何を血迷っているのか? 春海、好きなように生きれば良いのに。
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