真冬

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私が物心ついた時には既に両親は側にいなかった。  衣服を着る事で体温調節が出来る事。食べ物を一日三食食べて健康を保つ事。そういった当たり前の事も教わる事はなく、知らなかった。一年中裸足で過ごしたり、一年中半袖の服を着用したり、丸二日両親が家を空けて水だけを口にして空腹をごまかす日はザラにあった。 お風呂は身体が臭ってきたら入る。しかし沸かす事が出来ないので水のシャワーだ。身体や髪の洗い方もどのように洗えば良いのか、普通をテレビで見かけるまでは知らなかった。私はあまりにも無知で、テレビや人真似から見て学んで生活していた。  不満?その時そんなものは無い。    その生活が当たり前なのだと思っていた。他に比べるものも無く、善悪の基準も解らない幼い私にとって辛かろうが悲しかろうが与えられた環境それが世界で、受け入れるしかない。  皆、他の人間もそのように過ごしているものなのだと思い込んでいた。  だって知らないのだ。  汚くても、痛い事があっても、苦しくても、生きていける…寒さに慣れれば凌げるように。
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