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よるはひとり
コンビニから帰る道の小さな交差点で、一匹の黒猫に出会った。夜も一時を回ろうとする時間だった。
私は誰もいないのをいいことに、車道の真ん中を歩いていた。片手に缶ビールの入ったビニール袋を提げ、妙に浮かれた気分でそれを揺らしていた。
スキップをしてもよかった。よく知りもしない外国の童謡を口ずさんでもいい。十代だった頃の自分とあまり大差ない思い付きに頬が緩む。そんな時に、角に立つ建物の陰から猫は出てきたのだ。
爛々と光る目に思わず足を止める。猫は横断歩道の手前で立ち止まり、私をじっと見つめ始めた。
警戒してるのかな、と思い、「ニャー」と鳴いてみる。
お先にどうぞ、という意味を込めてみた。けれど、猫は動かない。そりゃそうだ。
いよいよお酒が回っておかしくなったのかも、とカサついた目元を触れてみた。視界はくっきりとしているけど、頭はボヤーッとしてる。
地元の友達が見たらと思うと、少し恥ずかしい。
「どうしようかな」
呟いていると、『ニャー』と一声だけ猫は鳴き、ゆっくり横断歩道を渡り出した。
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