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夕方稲生がアパートへと戻ると、階段を上って目の前の部屋の前に、一人の男性が立っていた。その後ろ姿を見て、稲生は思わずどきりとする。その階段を上った目の前の部屋こそ、件の奇妙な同居生活が送られている部屋なのである。
階段を上ってきた足音に気が付いたのか、男性がくるりと振り返る。
「あ、こんにちは」
「こんにちは」
振り向いた男性は、稲生と同い年くらいの男だった。
「このアパートに住んでる方ですか?」
「ああ、はい。二〇七号室の稲生と言います」
「あ、それじゃあお隣ですね、よろしくお願いします! 僕は今日二〇八号室に引っ越してきた新島と言います。春から浦沢大学の一年生になります。稲生さんも浦大生ですか?」
「ええ、俺は春から二年生です」
「あ、先輩なんですね! あの、いろいろとご迷惑をかけることもあるかもしれませんが、よろしくお願いします!」
「いえ、こちらこそ」
新島ははきはきとした話し方で声も大きい。身体つきもがっしりとしているので、何かスポーツでもやっているのだろう。
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