霧はいつ晴れるのか?

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僕には、同居人がいる。 彼…。いや、そもそも一緒に暮らしているのはヒトでもなければ、動物でも無い。なんせ、「霧かかった何か」なのだ。 この「霧かかった何か」とは長い付き合いになる。具体的に言うと、幼稚園の時からずっと僕の側から一分一秒離れた事が無いのだ。風呂に入っている時も、寝る時も、外にいる時もだ。必ず僕の側にいる。 「霧かかった何か」は、僕にしか見えないらしい。 母に一度、「この、白いモヤモヤは何?」とあまりの不気味さに聞いた事がある。 すると、母は「白いモヤモヤ?そんな物無いよ?」と首を傾げる母に、何度も訴える僕を不思議に思ったのか、あるいは、不気味だと思ったのか、僕を病院に連れて行った事がある。 結果を言うと、まったくの白。いたって普通の凡人との事だった。 医者は「妄想癖でしょう。」と片付けられた。 それからというものの、母に「霧かかった何か」の事を聞くと母が強めの口調で「そんな物は、どこにもないのよ!いい加減にしなさい!」何度も叱られた。 それ以来、僕は誰かにこの「霧かかった何か」を喋る事は無くなった。 面白い事に、この「霧かかった何か」は時より形を大きくしたり、小さくしたりと大きさを変える事がある。 特に、形の大きさを頻繁に変えるときが誰かと会話をしたりすると変わりやすい。 比較的に仲のいいヒトと会話すると、小さくなる。が、中の悪いヒトと会話すると風船の様に大きくなり、今にも僕を飲み込んでしまうかのように大きくなる。 そんな、訳の分からない、原因不明の「霧かかった何か」だが、特別悪さするわけでもなく、ただ鬱陶しだけだ。じゃないと、ここまで一緒に居られない。居られないのだ。 だけどもう、限界。限界になってしまった。 いつも、お前は僕の側でずっと、ずっと、その霧の中からじーっとぼくを監視するかのように見て、なぁ教えてくれよ。死ぬ前に、お前が一体何者なのか教えてくれ。「僕を苦しめ続けた、お前は一体なんなんだよ!」 男は、ナイフをあらん限りの力で自身の腹を刺して、死んでいった…。 僕たちは、モラルや世論といった思念体と生きている
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