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「こんにちはぁ~」
散々あれこれ悩んで、ともかく学校行事さえ乗り切ればと決心して数日。学校から帰ると店に着物姿の女の人がいた。どうやって入ったのだろう。警察は――まずい。母さんがいないことがバレる。
「誰ですか?」
恐る恐る尋ねると女の人はにこっと笑った。
「たみちゃん」
いや、そうじゃなくて。
「何か御用ですか?」
「今日からここに住むの」
「は?」
もしかして本気で通報したほうがいいかもしれない。いくら施設は嫌だからって命には代えられない。
「あの、本当に誰ですか?」
「たみちゃんよ。あなたのおじいちゃんの友達」
「すみませんけど、聞いたことないです」
あたしの知ってるじいちゃんの友達はみんな八〇歳を超えている。
「本当よう。智晴さんが死んじゃったって聞いて来たの。困ったことあるかなって」
智晴は確かにじいちゃんの名前だ。だからって。
「身分証明ありますか」
「あるある」
たみちゃんは懐から免許証を取り出した。確かに、木常たみと書いてある。写真も一緒だ。
「困ったことはないです」
「お母さんは?」
言葉に詰まった。散々、シュミレーションしてこのざまだ。
「います、けど」
「ふうん?」
ダメだ。このひと知ってる。
「えっと」
「そんな顔しないで。大丈夫。だーれにも言わないから。あ、晩御飯作ってあげるね~」
「え、ちょっと!」
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