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誰もいない空間に手を上げて、宣誓してみる。
自身が通う学校でも、友人達が塾帰りに魔法少女を見たとか、
ヒーローに救われたなんて話をよく聞く。
つまり、この小さな町にも確実にいるのだ。ただ、彼女が出会わないだけで…
残念この上ない。
そんな思案に暮れる組子の全身を突如、巨大な振動が襲う。
慌ててテーブルの下に隠れるも、期待で胸が弾む事を不定できない。
「地震じゃない。テレビでも速報出ていないし。スマホも鳴ってない。
これは多分何かが空から落ちてきた衝撃音! という事は
ようやく私にも遭遇フラグですか! ワクワクしますね。」
組子の予想を裏付けるようにすぐに止まる振動。震源地は恐らく自宅の庭付近。
意気揚々と窓を開けた。爆弾が落ちたみたいに変形した庭には巨大な飛行機の
一部分と思われる残骸と、そこに佇む一人の兵士。
焼け焦げた迷彩服に身を包み、明らかに凶悪な面構えの兵隊が、
組子の視線に気づき、これまた邪悪な笑顔で咆哮を上げる。
「ウオオォォォ! こんにちわぁぁぁ! お・嬢さああぁぁん!! 」
彼女は迷わず窓を閉めた。
「もしもし警察ですか? 庭に不審なコマンド野郎がいるんですけど。
中学三年生の可愛い系少女が“あっ? 貞操の危機かも! ”なんて思っちゃう感じの!
ですから、すぐに変身系ヒロインかスーパーヒーローを自宅まで!!
もしもし? わかってるんですよ。貴方達、彼等と協定を結んでいるんでしょ?
ネットでもたたかれてますし。とにかく、もしもし? 」
一気にまくしたてた電話の線が切られている事に気がつく。
「とりあえず、警察は勘弁してくだせぇよ! お嬢さぁぁん! 」
組子の背後から不気味な声が響く。
(いつの間に室内へ?)
考えている暇は無い。やるべき事は決まっている。コードレスの受話器を握りしめ、
振り向き様に、声のした方向に向かって勢いよく投げつけた。
スナップの効いた一撃は不審者の顔面を直撃し、豚のような悲鳴を上げさせる。
見れば、先程庭に立っていた兵隊が顔面を抑え、低いうなり声を上げながら蹲っていた。
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