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もともと文章を読むことは苦ではなかったし、書くこともやぶさかではなかった。作文の課題を出されても、僕は割とすぐに書き上げてしまって、どちらかと言えば、ウンウンと最後まで頭を悩ませるクラスメイトを、縁側で茶を飲む老人のような目をして見つめている側の人間だった。だから高校の朝読書の時間は「合法的に学校で自分の好きな本を読める時間」として、割と好ましく感じていた。
幸いなことに、本のリサイクルショップが家の近所にあった僕は、これを機会にもう一度、文芸を友としようと、安いものを中心に本を大量に買い込んだ。家は寒いし、暖房費をかけたくないから、何もしないのに街に出て、駅の待合室とか、百貨店の階段近くにあるベンチに腰掛け、何冊も本を読み漁った。
ふと、とうとう我慢できなくなって新品で購入した恋愛小説を読んでいた時、頭の中に、急に、光がすぅっと差し込んできた気がした。
(もしかしたら、今の自分なら、なにか物語をつくることができるかもしれない)
今にしてみればおこがましい考えだけれど、いくつかの本には、本当にその世界観やストーリーの組み立て、風景や心情描写の緻密さに圧倒されたが、中には(こういう作品でも、本になったりするものなのか)と思うようなものもあった。本当にただの素人な考えで(これなら、自分にも書けるんじゃないか)と思ったことが、僕がペン代わりのノートパソコンをいつも持ち歩くようになったきっかけだったと思う。
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