4.

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「オレは思ったんです。オレが色水持ってくるのを忘れたから、彼女はその代わりに死んだんだ、って」 鼠谷が急に話し出したのは、暇つぶしには重すぎる過去であり、鼠谷の傷だった。 「…そんな馬鹿な」 「はい、今ではちゃんと分かってます。あれは不幸な事故だった、あの色水は何の関係もない」 自分に言い聞かせるように言う鼠谷は、いつもの何を考えているのか分からない笑顔じゃ無かった。 無理やり作っているのが分かる。 「でも、あれから桜の木の下が怖いんです。本当は近付くのもダメです。 桜の木の下でオレが何がしたら、また誰か死ぬんじゃないか。バカバカしいけど怖くて仕方ないんですよ…」 オレ自身なら良いのに…と、付け加えた鼠谷は、途方に暮れた迷子の様な顔で、力無く笑った。 「…じゃあ、何で今日は来たんだ?」 「何でって…仕事ですから、休む訳にいきません。それに、猫田先輩居るから大丈夫かな、って!」 鼠谷は笑顔で答えた。 そんな震える手で、大丈夫、ってなぁ? 「…」 「?」 キョトンとしている鼠谷。 自覚はないのか… 良く見ると顔色も良くなさそうだ。 「…お前、変なところで不器用なんだな。確かにイメージ変わったよ」 「な!」 鼠谷は、珍しく赤くなった。ちょっと面白い。 「体調悪いなら帰れよ。部長らには言っといてやるから」 「嫌です!初めてだし、こんなことで毎回休めません!」 「こんなことってお前…」 いや、こんなことなんてきっと口だけだ。 もしくは、強がりか。
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