光の下

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「は?、は?、やっと出れた」 ため息と同時に、達也は空を仰いだ。曇ってはいるが、うっすらと太陽の光が指先を照らしている。 M刑務所正門前。 逮捕時から計算すると、約2年半振りのシャバである。罪名は傷害。 刑期は、1年6ヶ月と短かったが、裁判が長引いた為に拘置所暮らしも長期化した。 とにもかくにも外に出れただけで、何とも言えない解放感がある。 しかし、これから先は不安で仕方ない。手荷物は、出所に備えて刑務所内で購入をした、ジャンボバッグという名の、ズタ袋が2袋。 ズタ袋の中には、僅かな衣類や弁護士から差し入れをしてもらった漫画雑誌、身の回りの洗面用具程度。 幸いな事に所持金は13万円位あるが、以上が達也の全財産。 もう、28歳になっていた。 迎え人がないか念のため、M刑務所正門前で小一時間程もボーっとしていたが、誰も来ない。 「仕方ねーよな」と、一人呟き、駅迄行くバスを待つ事にした。 バスも一時間に、一本位しか来ない田舎刑務所の為、更に40分程も経過した頃やっと乗り込む事が出来た。 しかし、荷物がバカ重い。刑務所のオヤジに雑誌の廃棄を頼んだが、外でやれと一蹴された。 仕方なくズタ袋に入れていると言う次第。
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