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「レイヴ、今日は仙台でライブやってる。プレイガイドで前に見た」
「仙台? 快人は仙台に行ったのかい?」
「仙台からの下りの新幹線が、停まってるだろ? それに巻き込まれてる」
そういえば、ニュースでそんなことをやっていた。
「でも、それならそう連絡すればいいのに」
「バッテリー切れで充電器を持ってないか、嘘がばれてお母さんに怒られるのが嫌か」
「確かに新幹線の切符は中学生には高いけど、母親に叱られるのが怖いって、子どもっぽすぎやしないか?」
「子どもにもメンツがある」
よくわからない。
「それ、全部想像じゃなく?」
不安を吐露すると、由樹は「だから確かめた」とスマホを振った。
「誰に?」
「だから平野さん。平野萌ちゃん」
「誰?!」
「快人くんの彼女」
「え、えぇ?! 彼女って、そんな子いたのか? というか、なんで君が知ってるんだ番号を」
「彼のスマホ画面がちらっと見えたときに、やたら履歴が多かったから覚えただけ」
「いや、覚えただけって……」
赤羽の木村家を訪れたのは、3ヶ月近く前の一度きりだ。それで今まで覚えていたのか。
「彼女の携帯は充電切れじゃなくてよかった。もう新幹線動いてるって」
私は呆気にとられて、そんな自分の姿が映る京浜東北線の車窓を眺めていた。
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