スロウ・ミュージックの、そのあとで。

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由樹の推測どおりだった。 彼女の存在を沙代子には隠していて一緒に行ったと言えず、さらに仙台のライブとなると反対されるかもしれないと思い、距離の近い大宮と重ねて嘘をついたこと。 新幹線なら早く帰れるからばれないだろうと思ったのに、予想外の事故で帰りが遅くなり、スマホの充電がなくなった上、母親にどやされるところを彼女に見られたくなかったこと。少女と一緒に改札から出てきた快人を見つけ、沙代子に連絡して事情を説明し、それから平野萌を最寄り駅で待つ保護者にひたすら謝罪しながら引き渡し、快人を家まで送った。 「とにかく無事だったんだから、あまり叱らないでやってくれ」と沙代子に頼んだが、今更何を父親ぶったことを、とでも言いたげな表情をされた。 平野萌の保護者に、行きがかり上、木村快人の父親ですと告げたのも、彼女にしてみれば不本意だったのかもしれない。 それでも一応、わかりました、と答えてくれた。 「迷惑かけて、ごめん……ありがとう。父さん」 快人のその言葉も、嬉しかった。彼に父さんと呼ばれるのも、ありがとうと言われるのも数年ぶりだった。 「ありがとう、由樹」 アパートに戻ってから、私は改めて礼を述べた。
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