得てして生物は滅び行くのか

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「はい」俺が返事をすると、彼女は矢継ぎ早に空中の電子パネルを操作しだした。その甲斐甲斐しい手つきはアイツのことなど忘れて見惚れてしまうほど美しい。細い指、つやのある黒髪。くっきりとした目つき。彼女を矯めつ眇めつしているうちに、彼女は業務を完了していた。 「“2-g”の部屋へどうぞ」彼女は手まねで奥の通路を指し示した。かくしてひと時の恋は終了するのだ。声にもならぬ、空疎な返事をして俺は言われた部屋へとすすんだ。  2-gの部屋はすぐに発見できた。コの字の通路の真ん中の、一番大きな両開きトビラの上に手術室にあるような電光板で“2-g処理班”と書かれていたからだ。おそらく2は二階、gはアイツの略号だろう。俺は二回ちいさくノックして、両開きドアの片方をあけた。  中には偉そうな髭をはやしたおっさんが数人、椅子にふんぞり返っていた。 「きたか若者よ」偉そうな髭をはやしたおっさんは偉そうだった。 「かけたまえ。これから重大な会議を始める」入り口の近くに立っていたスーツのおばさんが俺のために椅子をひいた。机の前におかれた長机には“g処理”とかかれた資料がきれいに並んでいる。いずれも日付は今日のものだった。 「会議ですか?」俺はいまいち要領がつかめずに尋ねた。 「あぁ」白いスーツをきた一番偉そうな奴が答えた。     
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