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「おはようございます、学様!」
パリィン!
外に居た人物は、盛大に窓を割って部屋へと突撃した。ガラスが辺りへ飛び散り、朝日を受けてきらきらと輝く。
「うおぉぉぉぉい!」
学は叫びながら、その場から飛びのいた。彼が立っていた床に、クナイが三本突き刺さった。
窓から入ってきた人物は、ポニーテールのメイドだった。
しかしただのメイドでは無い。手にはクナイを持ち、戦闘態勢を取っていた。
「今日のご予定は! まずは朝飯、その後勉強でございます!」
「嘘つけ! 今日は休みだろ!」
メイドはクナイを構えて学へと突撃した。
素早い身のこなし、風を切るがごとし。
シュンシュン、と手加減の欠片も無いクナイ捌きを、学は手と腕を使って全力で止め、受け流す。効果が薄いと見て、メイドは一旦後ろに飛びのきつつ、手に持っていたクナイを投げた。
回避の反応が少し遅れ、ピッ、と学のパジャマに切れ目が入った。
メイドはクナイを捨てフリーになった右手を振った。
ガシャリ、と袖から暗器の如く、拳銃が現れた。
ベレッタ92、アメリカ軍でも使われている拳銃だ。
「ふざけんな! 桜、お前くノ一だろ!」
「これが現代の忍者でございます!」
叫ぶ学に、桜と呼ばれたメイドは、発砲で返した。
ダンダンダン、と三発立て続けに撃たれた弾を、学は姿勢を低くし、桜の懐へ飛び込むことで躱した。
学はその姿勢から床に手をつけ、カポエイラの要領で足を振り上げた。足はそのまま桜の拳銃を蹴り上げ、そして胸を踏み、蹴り飛ばした。
一瞬、ふわりと柔らかい感触がした。案外大きい胸は、足で蹴っても柔らかかった。
桜は壁に叩きつけられ、しかし受け身を取って即座に姿勢を正した。
「お見事。一色家のご子息に相応しい術でございます」
「はぁ、そりゃどうも」
学は頭を掻きながら言った。
窓ガラスは割れ、壁には弾痕が三つ、床にはクナイが刺さり、部屋の中には硝煙の鼻をつく匂い。
普通に暮らしていればお目にかかれない、大変な光景だ。
しかし彼は無視する事にした。
「……まずは飯食べるか……今日の献立は何?」
「スープにトースト、スクランブルエッグでございます」
「明日はご飯とみそ汁にしてくれ」
「分かりました」
桜は頭を下げ、割れた窓から外へ出て行った。
ため息を吐きながら、学は普通に扉から部屋を出た。
こうなったのは、数日前からだった。
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