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明日死ぬかもわからない人生、いつ死んでもいいと思って生きてきた。年をとっても身体が痛むばかりで辛いことだと思っていた。しかし目の前の老女の声は聞き取りやすく、にこにことした顔を崩さない。肌こそしわくちゃだが、しゃんとした身なりの美しさは見惚れるほどだった。
その年をとっても美しい姿が女は心底羨ましかった。
「私は、あなたのように綺麗になりたいです。どうしたらなれますか?」
老女は今度は目を丸くする。その動作も小動物的で可愛らしい。
「私たち、お互いの綺麗なところを羨ましがってばっかりね。女ってどこに行っても変わらないわねぇ」
「そうですね」
そういえばそうだ。相手の事をゾンビなどと思っておいて、いざ話してみたらこのざまだ。全く手のひら返しにもほどがある。
女もおかしくなって笑ってしまった。
二人してすっきりするまで笑い声をあげた後、老婆はこう言った。
「ねえ、今度は私が死体になりたいわ」
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