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作業所の仕事を終えた女はどたどたと家に上がり込み、真っ先に遺体保存装置に向かう。
「ただいま!お加減はどう?」
「上々ですよ」
「今日も美しいですよ」
「あらやだ、お上手」
「あと死体が返事したらおかしいですよ」
「はいはい」
そういうと死体は黙り込む。女はそれに満足して遺体保存装置から離れて教えてもらった家事をして、与えてもらった本で勉強をしていたが、どうしても意味が分からず頭を抱える。とうとう重い腰を上げて遺体保存装置に歩み寄る。
「ここ、教えてください…」
「死体は教えませんよ」
「いじわる!」
遺体保存装置からくすくす笑う声が聞こえる。女はその傍でうんうん唸りながら本を読解する。
そんな奇妙で愉快な死体との同居の日々を送った。
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