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棺桶の中の女は注意深く目玉をきょろきょろ動かし辺りを見回すと、そっとガラスケースに手を這わせそれを内側から外した。
「はあ」
肩が凝ったと言わんばかりに身体を動かし、勢いよく伸びをする。横になりすぎて固まった身体が自由を喜ぶようバキバキと音を鳴らす。
女は軽く準備運動をすると早速食事を漁り始めた。
女はかなり貧しい生まれであり、ある日あまりにも金に困ってある家へ空き巣に入った。そして後悔した。そこには最近流行りの『遺体保存装置』があったからだ。
これは元々食品保存の技術が転用に転用を重ねてできた技術だということくらいしか女は知らない。死体を埋葬、ないし火葬せずに維持できる棺桶型の機械だ。中に家族の遺体を入れ、別れを惜しむために保存する。それらのほとんどがしばらくすると『場所を取る』という理由で火葬や埋葬されるのだから、金持ちの道楽でしか無いと女は思う。
死体があると分かって気味悪がっていた女だったが、こちらは生きるのにも困る有様だと言うのに金持ちは死んだ後にまで自分たちのためにしか金を使わないなんて!と苛々し始めて遺体保存装置を蹴っ飛ばした。
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