死体との同居

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 遺体保存装置のガラスカバーがぱかりと開いた。 「やだ、どうしよう。中の死体が傷ついてなけりゃいいんだけど」  恐る恐る女が中を覗くとそこには誰もいなかった。女の目が丸くなる。  中身の無い棺桶など聞いたことがない。もしくはこれから運ばれてくるのだろうか? 「なんで機械だけここにあるのかしら?」  荒れた素性の女には全く理解できない。  その時、玄関の扉の開く音がした。  女は家主が帰ってきたと慌て、何をトチ狂ったのか、自分が遺体保存装置に入ることにした。  万事休す。バクバクと鳴る心臓を抑えながらパニックになった女は死体のフリをすることにした。死体が別人だったらすぐ気づかれることくらい想像に容易いが女は死体になりきる以外の方法を何も思い浮かばなかった。  足音が近づいてくる 。女は身体の一切を動かさないように注意する。足音はすぐ傍にまでやって来て、止まった。  今、この部屋の家主が覗き込んでいる。女は睫毛が震えないようただ祈った。 「ただいま」  遺体保存装置の外からそんな言葉が聞こえたかと思うと、足音は再び遠ざかってどこかの部屋に入ったようだった。  女はこう思った。家主は目が見えないのだ。だから中の人間が家族でないことに気づかない。     
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