同居生活スタート

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同居生活スタート

前回のあらすじ。  お風呂は異世界に繋がっているものだ、なんて考えながら、毎日の日課、浴槽に浸かっての妄想を終え風呂から上がってみると、トイレに見知らぬ全裸のイケメンが立っていた。どうやら異世界に繋がっていたのは、風呂ではなくトイレだったらしい。…ちょっと、自分で言ってて訳がわからなくなってきた。 「…で、お兄さんはどっから来たの」 「うーん、それがここに来る前のことはまーったく覚えてないんだよねぇ」 「……」  にこ、と微笑みながら言われてもちっとも笑えない。  とりあえず、ついさっき遭遇した謎の全裸イケメンには自分の服を与え、六畳のリビング兼ダイニング兼寝室に通し、その辺にあった座布団に座らせた。自分より幾分か背の高いお兄さんにはズボンの丈が合わなかったらしく、どことなく不満そうな顔をしたので、仕方なく寝間着にしていた大きめのジャージを貸した。それでも少し短いとかどういうことだ。くそ、こんなところでもイケメンとの差を見せつけられるとは、なんたる屈辱。  はぁ、と小さくため息をつき、目の前の青年に目を戻す。ひどく整った顔面に、碧眼というだけでも珍しいのに、さらに目を惹くのはその美しい髪だろう。うっすらと青みがかった銀髪を肩まで伸ばしているのに、ちっとも傷んだ様子はなく、うねりなんて知りませんというようなさらさらの質感は、全国の天パ民を敵に回すレベルだ。その上肌は白く、なかなか身長もあり、腹が立つことに腹筋も割れていた。風格からしてどこの貴族様ですか? と聞きたいところだが、あいにくこの男はそれらの記憶を保持していないようだった。名前を聞いてもわからない、お家を聞いてもわからない、では犬のおまわりさんもお手上げだ。 「お兄さんは、いつからここにいた?」 「うーん、気づいたらここにいたからなぁ。わからないや!」 「………」  あっけらかんと言い放つその様に、若干の殺意が沸き上がるがなんとか耐える。こんな見ず知らずの人を殺めてしまったら、どうなることかわかったもんじゃない。もしかしたら本当の貴族様で、もし間違って傷つけでもしたら、後でとんでもない報復が待ち受けているかもしれない。もちろん、知っている人だって殺す気は全くないのだけれど。
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