昭和の猫

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 僕は、驚いて叫ぶ。 「シロが怪我をしている!」  祖父母は、何時ものように赤チンを持ってシロの治療に当たった。祖父が押さえつけ、祖母が赤チンを塗るオペが始まる。  シロの白い毛は、今ではお目に掛かれない赤い消毒液により、ピンクに染まる。シロは傷が染みるらしく、祖父の腕を引っ掻いてうさを晴らす。これでは、祖父にも赤チンが必要になる。  シロが負傷した理由は明確で、他の猫との喧嘩だった。  現在では、猫AIDSなどと言う恐ろしい病気を心配し、猫同士の無用な接触を避けたりするが、当時の猫は盛んに喧嘩をした。  この地域でのシロの実力を知るよしもないが、相当なキャットファイト(牡だけど?)を演じているのだろう。  
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