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「誰にもって、誰に言うのよ」 「誰にもは、誰にもだ」 「黙ってる間は、この部屋に置いてやる。家賃はいらない。けど、自分のことは自分でしろ。金が貯まったら出てけ」 「あなたにそこまでしてもらう筋合いないけど……」 桜が減らず口を叩くと、夏輝はその倍の勢いで言葉を返した。 「あんたをあのまま漫喫に送り届けたなんて冬馬さんに知られたら俺が殺されるんだよ。黙ってここにいろ。とっとと金貯めてくれ」 ため息をついた夏輝をみて桜は、改めて部屋を見渡した。 「あなたいくつ?」 「23だけど」 「23歳でこんな大きな家住めるの?」 「歳は関係ねぇだろ……いいか、ぜってー誰にも言うなよ」 「……分かった。お言葉に甘えて、お世話になります」 疑問はいくつもあったが、それ以上に久しぶりに広い部屋で生活できることに安堵する気持ちが勝っていた。 ペコリと頭を下げた桜に、夏輝は合鍵を渡した後 「あっちに来客用の寝室あるから。そっち使って。俺は明日早いから寝る」 とそそくさと隣の部屋へと消えた。 一人になると、静かな部屋の空気が不安を抱かせた。 何で、あの人は急に自分を泊めると言い出したのか。単純な親切なのか、それとも本当に冬馬が怖いのか……。 にしても物が少ない部屋だなぁ……と一通り考えた後、結局桜は傍のソファーに座ったまま気づくと眠りに落ちていた。
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