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店のドアを開けると、カランッという音と共に
「あっ、きた」
という言葉とほっとしたような笑い声が聞こえた。
「寝坊したの?」
「違うの。いや、寝坊もしたんだけど……色々あって、ここまでどうやって来れば良いかも……」
「えっ?遭難でもしてたの?」
「うん……まぁ、そうかも。遅れてごめんね」
そう言って、彼の頭に手を伸ばそうとすると、その手をがっしり掴んだ後
「桜、もう俺そんな子供じゃないから」
と顔を赤くした後、杏介は
「こちらにどうぞ」
と桜をうながした。
「今日はどうしましょうか?」
「ばっさりいってください!」
「えっ?北斗のために伸ばしてたんじゃなかったの?」
「その北斗を思い出したくないから切るんです」
そう言ってため息をついた桜を見て、杏介は少しの間を置いた後
「かしこまりました」
と笑い、はさみの用意を始めた。
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