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「いや、そちらの方こそ失礼じゃないですか」
「えっ?」
意外な言葉に桜がひるむと、冬馬が話に割り込んだ。
「桜ちゃんごめん。夏輝!やめろ」
「夏輝?冬馬さんの知り合いですか?」
「ごめん。こいつ甥っ子なんだ。結構真剣にバンドやってるもんだから……。ごめんね」
ちらりと彼の奥にギターケースを見た桜は、なるほどとうなずいた。
「だったら最初からそう言ってくれれば良いのに。気分を害したならごめんなさい」
頭を下げた桜を見て、夏輝は
「そういうところですよね」
と返した。
「えっ?」
「とりあえず、謝っとけ、みたいな。さんざん大きな声で男の愚痴言って。もしかしたら言葉が届く範囲にあなたの言動を不愉快に感じる人がいるかもしれない。もしかしたらそれで傷つく人もいるかもしれない。事前にそういう小さな配慮ができない雑さが、馬鹿な男に引っかかる原因なんじゃないですか」
「こらっ!夏輝!お客様に失礼なこと言うな」
「冬馬さんにとってはお客様でも俺にとっては、うっさい客だもん」
酒を口に含み、夏輝は鼻歌を歌った。
「冬馬さん!何なんですか?この子。いくら冬馬さんの甥っ子でも許せません。あんた、いくつ?私の方が絶対年上よね!年上を敬うってことを知らないわけ?」
桜の言葉を聞いた夏輝はじーっと桜を見つめた後、
「無駄に歳だけとって何の成長もしてない人のどこを敬えば?」
と返した。
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