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あの女(ひと)がやってきた
そして再び梢のシゴキは夜遅くにまで及んだ。
俺は何年かぶりに、子どもの頃のように梢の家族と食卓を囲んで夕食を取った。
鮎の塩焼きが、俺を歓迎してくれた。
意外にも、梢が作ったキュウリなますの酢加減は塩梅が絶妙だった。
更には、俺はしまいに風呂まで浴びさせてもらったのである。
おぼろげながら、小さい頃には一緒に入ったような記憶もある風呂に……。
その後に自習を命じた梢は、やがて風呂上がりの薄いピンクの寝間着姿で戻ってきた。
きわどい格好だったわけでもないのに、つい目のやり場に困った。
昔のことを考えると、さすがに正面から見られなかったからである。
いろいろあって俺は流石に疲れ果て、再び川沿いを帰ろうという気は起こらなかった。
大人しく月明かりの街道を歩いて帰ると、両側の稲田からは蛙がしんしんと鳴く声が聞こえていた。
だが、その努力空しく、俺は次の日の追試でも合格点を取れなかった。
わざわざ登校して直前まで前日の復習をさせた梢は、図書館での「受験勉強」の後、再び教室までやってきて、惨憺たる結果を確かめにきたものである。
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