【ペットを飼いたい】

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私は抱き締めて、その柔らかいお腹に顔を擦りつけていた。あーなんか、いい香りがするぅ、甘い、花の香りみたいな……。 「あの、嬉しいんだけどさ。恥ずかしくもあるんだよね……」 「んー?」 私が上の空で答えると、その子は私の膝に乗ったまま、ぼんっと人の姿に戻る。 「きゃあ!」 「うんうん、僕はこっちがいい」 そう言って抱き締められた、男性の胸に顔を押し付けられて。 「きゃあ、駄目よ、そんなの!!! 猫じゃなきゃ!」 「あのさ、君はこの現実を受け入れているのかい? いないのかい?」 言われて、彼の腕の中で顔を上げた、緑色の人懐っこい瞳とかち合う。 「……」 ──あ。 少し考える時間は必要で、そして思い当たる。 人になったり、猫になったりするのは現実としてあるの? それって妖怪とかの類では……ん、でも目の前の彼は、とてもいい人そう……。 なんてったって、美形だ。 途端に恥ずかしくなる、こんな男性に抱き締められている現実に。 「ね、猫になって……!」 「駄目だね」 彼の緑色の瞳が、いたずらっ子のようにきゅうっと細まった。 「君にお礼をしたい、それにはこの姿の方が都合がいい」 「え、でも……でも……!」 私が拾ったのは猫なのに! 私は猫が飼いたいの! イケメン男子は飼えないよ!? 終
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