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会社の帰り道、自宅のマンションの近くで、猫を見つけた。
交通事故にでも遭ったのかな?
道に倒れて、初めは死んでいるのかと思った、でも微かにお腹が動いてる、生きてるんだ!
この道路は細いけれど抜け道にも使われているので、意外と交通量が多い。そんな車に轢かれてしまったのかも!
どうしよう、生きてるなら助けてあげたい……!
私はマフラーに包んで、その真っ白な猫を抱き上げていた。
駅まで戻れば動物病院がある、幸いまだ診察時間だった。
「んー? 事故かなあ?」
先生が猫を診ながら言った。
「猫同士の喧嘩か、もしかしたら子供にいじめられたか、大人が邪魔だとなんかしたのかも?」
轢かれたと言うには怪我の程度は軽くて、切り傷が多いと教えてくれた。
こんな綺麗な猫を虐めるなんて!!!
「手当は終了。帰ってもいいけど、この子、君の飼い猫じゃないんでしょ?」
「あ、はい……」
「じゃあ預かるかあ」
「あの……もし、野良だったら、どうなるんですか?」
「うーん、一応引き取り先を探して……見つからなかったら……」
「……たら?」
聞いたけれど、教えてくれなかった。
「でも、こんなに綺麗な猫です! どこかで飼われていたのかも!」
「うーん、確かにメインクーンっぽいんだけど……多分、この子はミックスだよ。一応マイクロチップも探したけどなかったし、野良の可能性が高いかもね?」
長毛の真っ白な猫ちゃんが、野良猫!? なんて贅沢な世の中なんだ!
「一応、迷い猫の案内と、新しい飼い主を捜すお知らせを出しておくよ」
先生は優しく言ってくれた。
でも、その時には私の決心は固まっていた。
「私が引き取ります」
「え?」
「いえ……新しい飼い主が見つかるまでとかでいいです、私が面倒見ていいですか?」
「ああ──じゃあ、お願いしようかな?」
きっとこれも出会いだ。
私は子供頃から動物を飼いたいと思っていた。
就職の為に横浜に出てきて、ペット可のマンションだったけれど、忙しさにかまけて飼おうなんて思わなかった。
少しの間になるかもしれないけど、ううん、できれば引き取り手が現れないで死ぬまでお付き合いしたい!
私は両手いっぱいになるその子を抱いて、家に帰った。
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