幻聴

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一度だけ、試しに惣菜弁当を買ってきて彼の目の前に出したことがある。彼は、白米が喉を通る度にヒリヒリとした感覚が伴い、化学物質の臭いがするなどという文句を並べ立てながら完食した。 そして、お前が作るのがいい、とだけ言い、定位置である紺色のソファーに腰掛け、テニス中継の観戦を再開した。 俺がもし、女であったとしてもこいつにだけは惚れまい。 アメリカのどこかややこしい名前の州で行われていたシングルス男子個人予選、Bブロック、1ゲーム目。フィッチでサーブを先攻で始めた選手がリードの、サーティー・ラブだった。
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