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ラジオのツマミをスライドさせると、いつもの司会者の声がぼんやりと届いた。
ガチャリと店の扉が開く。そして間もなくぎこちない音を立てて閉まった。
顔全体を覆う黒いマスク、襟の大きい黒いシャツに黒のパンツ。艶々の黒い革靴を履いた者が、洗川清美の視界に収まっている。
「い、いらっしゃいませ」
清美が言った。
黒ずくめの者はそこそこ身の丈があり良い体つきに見える。少しクセのある黒髪が肩までかかっているのがわかった。
神野桐也はラジオの単一電池を新しいものに入れ替えたところである。
ラジオが置かれている棚はしっかり手を伸ばさないと届かない程の高さにある。桐也は電池を交換する際に少しズレてしまったチューナーを調整した。
司会者の笑い声がクリアに店内に響いた。
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