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感覚の消失
感覚が薄れていく。そう思い始めたのはいつからだろう。
桜も、海の広さも、枯葉を踏む音も、霜をかぶった雑草も、なにもかもが新鮮な喜びを味わえなくなった。繰り返し・・この世界が、仕事と同じくルーティンで構成されていると知ったとき、私は目の輝きを失った。大人になる度新しいものに出会える期待はとうの昔に消え去った。寧ろ昔在った新鮮な感情が徐々に消滅する喪失感が強まるばかりである。
昔は雨も雪も、好きだった。水たまりをジャンプして飛び越えるのが楽しかった。濡れたアジサイをきれいだと思った。雪の日はもっと嬉しくて、雪だるまを懸命に作った。かわいい顔になるよう葉っぱや木の枝をあちこち探しまわった。かつてそうであった。私は四季を体全体で感じていた。それを喜びとしていた。なのに今はどうか。雨も雪も、電車のダイヤルを乱す煩わしいものだと感じている。大人になるってなんて悲しいことなのだろう。ゲームも長続きしなくなった。すぐ飽きてしまうのだ。新鮮味がないから。昔は説明書を読むだけでわくわくして仕方がなかったというのに。
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