19人が本棚に入れています
本棚に追加
気づいたときには、僕は両手をピアノに打ち付けていた。
破裂音にも似た凄まじい衝撃と、滅茶苦茶に押された鍵盤が不快な和音を叩き出す。
視界に映る限りの人々が慌てて耳を塞いだ。小さな悲鳴も聞こえた。
ガシャンと音を立てた先を見れば、教頭がパイプ椅子を後ろに倒して立ち上がっていた。
けれど、そんなことはどうだっていい。
心の奥から何かがこみ上げる。この感情の名前を僕はまだ知らない。
不思議と、懐かしい感じがする。
あの夏、公園で涙を堪えたときも、同じ感覚だった。
この気持ちの名前は、なんだ?
堪えたあの涙は、なんだ?
最初のコメントを投稿しよう!