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何もかもを投げ出したくなるような強い衝動にかられる。職員室を出て、誰も居なくなった廊下を通り抜ける。
下校時間はとっくの前に過ぎていた。
がらんと静まり返った教室の、窓際の机に置いてある僕の鞄に手をかける。
楽譜を仕舞おうとしてファスナーを開くと、グシャリという嫌な音がした。ファスナーに紙が挟まっている。
「なんだよ……?」
どうやら美術で使うために家から引っ張り出してきた、スケッチブックに挟まっていたものが、鞄の中でばらけていたらしい。面倒くささに押し潰されそうになったところで、ふと気がついた。
それは五線紙だった。茶色く色褪せた紙の上に、線が並んでいる。均等な線の上に、おたまじゃくしの出来損ないのような音符が浮いていた。
この五線紙よりもずっと色褪せた思い出が、頭の中を駆け巡った。
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