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「この出来事は、みんなにはナイショね」
「そうだね。
あ、先生、サナギ、サナギ!」
虫かごの中で、はるとくんが、いえ、クラスのみんなが、待ち望んでいることがはじまろうとしています。
先生は延長コードを取り出し、ビデオカメラのコードを繋げ、スイッチを入れました。画面に撮影中の印があらわれました。
ビデオカメラのセットをまってあたかのように、サナギがゆれ、われ、中からちょうが出てきました。
時間にして一分ほどでしたが、とても長い時間のように感じました。
その間、学校すべてが、その様子を見守っているかようでした。
やがて、ちょうが虫かごの中で飛びはじめると、先生はスイッチを切りました。
教室に足音が近づいてきます。はるとくんのお母さんです。お母さんの顔が見えるなりはるとくんはお母さんに飛び付き、ちょうが羽化した瞬間を興奮しながら話します。
「まあ…… すてきなものが見られたわね」
はるとくんのお母さんが目を細め、頭をなぜました。
りえ先生は、はるとくんらを見送りました。そして、小さな声で学校の七不思議にありがとうと言いました。
どういたしまして。と、りえ先生の耳だけに返事が聞こえました。
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