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鬱陶しい後ろの髪をヘアゴムで縛った。襟元を掴んで風を入れても、生温く湿った空気は不快感を増幅させるばかり。ない、ない。どこにもない。こんな、ひどい。熱気が籠った室内で、途方に暮れている。
夏休み三日目。美人は三日で飽きるとか、兄ちゃんの口真似ではないけれど(ていうか正直セクハラだと思う)すでに長期休暇に倦んでいた。遅く起きても文句を言われないのは良い。家族は皆仕事やバイトで出払ってしまうから。でも一人の時間は持て余す。趣味や宿題に使えばいいのだろうけど、暑くて何もする気が起きない。うちの自治体では学校ですら全ての教室にエアコンが設置されているというのに、我が家ではリビングの一台のみだ。昼前に汗だくで目を覚まして、食料を求めるゾンビのようにリビングに向かっても、すぐさまこもった熱気から解放されるわけじゃない。お父さんがリモコンを定位置に戻さないから、蒸し風呂のような室内で探し回ることからはじめないといけない……。今まさにその地獄の渦中に私はいた。
結局挫けてしまって、極力薄着でなるべく動かないことに専念してしまう。こうして無為に時間が過ぎていく。これが時間の浪費でなくてなんだ!
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