『クラマト』

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「大丈夫ですか?今救急車来ますので…」 彼女の瞳が開いたのは一瞬だった。 嘘みたいなコバルト色の瞳が目に焼き付く。 「何があったんですか?」 店員が俺のシャツを掴む。 首をゆるく振ると救急車のサイレンが近づいてきた。 「あ!来ました!お客さん、救急車来ましたよ!大丈夫ですか?」 店員が店の入り口に走るといそいそと案内する。 ガタガタと店内に響く救急隊員の足音。 彼女が救急車で運ばれて行った後、呆然とその場に立ち尽くす俺と拓斗。 「……」 「……」 俺達の沈黙を壊した店員。 「すみません、これから警察が来るので事情を聞かせてもらえますか?」 「ああ、わかった。」 俺達は自分の個室に戻ると座った。 「なんか…凄かったな…」 頷く俺は空のグラスを握った。 「なんで血ぃ吐いたんだろ…さっきの男に毒でも盛られたのか?」 「わかんねえ。あんまり余計な事言うなよ。」 また俺の煙草に手を伸ばすと一本口に咥えて火を灯す。 「はぁ…心臓バクバクする…」 「おう。」 突然吹き出す拓斗。 「ブスじゃなかったな!」 「はあ?」 今度は咥えタバコでニンマリと俺を眺める。 「運命的に出会ったな!」 「バカ言うな、何が運命だよ、アホか。」 コバルト色の瞳が思い出されて首を振ると個室のドアがノックされた。 「こんばんは、警察です。少しよろしいですか?」 「はい、大丈夫です。」
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