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「これだけじゃ足りないよ!」
カナが袋の中身をみて喚いた。俺は身を乗り出すカナの腕を引いて彼女の耳に口を近づけ、小さく言う。
「いや。これ以上はくれないよ。どうせ村長にとってはこれでも多い方だと思ってる」
それを聞いたカナは大きな目を一層見開いた。
「な、何で?」
「お前はしらなくていい」
「何で?」
「何でも」
俺達の小さな会話を遮る様に鋭い声が響いた。
「明後日までには持ってこい!」
その言葉に背を向けるように村長の家を出た。前を俺が俯き黙って歩いていると、とととっと小鳥の様な足取りでカナが横に並んだ。
「何で引き請けたのぉ?」
首を傾け尋ねて来るカナ。
_____味は悪かったけど飯を食わせてもらって、世話をしてくれた借り返し、とは言えず、
「村のやつらにお前の事を認めさせるんだよ。こいつはいい奴なんだってな。それに俺はアイツが気に入らねぇんだよ」
「あいつって誰?」
「村長だよ。なんなんだあいつはぁ…」
「何で?」
「何でもだよ」
「そう…でも、ありがとう!」
と、太陽のような笑顔を浮かべカナが言った。なにに対してのありがとうなのか分からなかったが、特に俺は気にもせずこれからのプランを立て始める。
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