…で?

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「でもさ、美咲もなんか憧れってゆーか、あーこんなの現実になったらいいなーって夢見てることあるでしょ?AV観てきたからこそのなんか、純粋なトキメキみたいなやつ!」  あるよね!?と仲間に強くプッシュされ、しばらく困った様子で考え込んでいたけど。 「…あ」 「おっあった!なになに!?」 「う、いや、…言うの恥ずかしいんだけど、」  ……ん?  なんだ?  たった今まで明日も明後日も晴れですよーっていう日常会話並みの無表情だったのに。  急にどうした。 「…でこちゅー、とか…」  …顔が噴火してる。 「えっでこちゅー!?ここででこちゅーなの!?」 「うわーめっちゃかわいいっ!つかなんで!?」 「えっあ、えーと、だってでこちゅーとか、好きな人としか出来なくない?ていうかしようとも思わなくない?って思って…。AVでも見たことないし…」  鼻息荒く大興奮している女子を横目に、俺はちょっと冷静に考えてみる。  キスは当然AVでやってる。付属品なんだか前哨戦なんだか知らないけど、してないやつを探す方が無理だろう。だからまあ、誰とでも出来ると言えなくもない。  ほっぺは…海外では挨拶だしな。手も、敬意を表するためなのか女王様とかにしてるのをテレビで見たことがある。つまり恋愛感情は必要ないってことだ。  でこちゅーはどうだろう?  普通のドラマとかでも観たことあったかな? 「あーなんかほっとした。美咲ちゃんも夢を捨てきったわけじゃなかったんだ」 「ちなみに今好きな人はいないの!?」 「てかでこちゅーだけじゃなくて他のもちゃんと好きな人としなよー。やっぱ好きな人は違うよー」 「おっと春菜のろけ出ましたー」 「うわうぜー」 「えっ春菜ちゃん彼氏いんの!?誰だれー!?」  話の矛先は移ろっていくけど、そいつはどうにも頬の火照りが抜けないらしく、相槌を打ちながらも顔を両手で覆ったりぱたぱた仰いだりしている。  前髪越しに見える額も、まだ、うっすら赤い。  俺はなんとなく、そこから目が離せなかった。
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