第1日目 午前10時37分

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 日本の首都、東京から北へ1000キロ。北海道の真ん中から少し北、大雪山の麓の北西側にある街、それが旭川。  でっかい工場がある訳でなく、唯一無二の名品がある訳でなもない、ありふれた街だ。  よくある、少し寂れかけた地方都市のひとつ・・・・だった、これまでは。  街の中心部、旭川駅前から伸びる歩行者専用道路、通称「買い物公園」がある。郊外に大型ショッピングセンターが相次いで開店し、最近は人出が少なくなった。駅から遠い5条通りから8条通りは、歩く人が疎らですらある。  買い物公園通りに直角に交差する歩行者用道路がひとつ、旭川市役所と常磐公園を結ぶ7条緑道だ。年を経た大木が緑の影を作り、買い物公園よりも公園らしい雰囲気をかもす。  駅前では騒々しくさえある街頭放送も、この辺では音量控えめ。住民への配慮だろう。  8月も半ばを過ぎれば、乾いた涼しい風が吹き始める。秋の先走りを感じさせる日の事だった。
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