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矛狩の先導で、5人は部屋を出て、奥へ進んだ。
「エタルカ、エタルカ」
ちょっとパニックな掃除ロボットの横を通る。床に泥靴の跡がいっぱいだ。
廊下から排水パイプのような所に入った。
縄梯子を登ると、洞窟に出た。
「ここは五年ほど前に見つかった空洞です。温泉のボーリング調査中の事でした。この深さで、水が無い空洞は変だった。ボーリングをしていた会社に陸自のOBがいて、訓練ついでに、我々も調査に加わりました」
矛狩は淡々と説明する。
建築現場にあるような簡易エレベーターに乗った。鳥かごと同じ、上も下も丸見えだ。
「5年前から知っていた?」
「いや、あそこが開いたのは、塔が地上に出てからです。なんせ、街中では地震波の調査もできなくて、施設の全貌は全く判らなかった」
お手上げだった5年間を振り返り、矛狩は首を振った。
ガシャン、無粋な音で、エレベーターは止まった。
どこかのビルの地下室だった。
「あじゃぱあ」
久留美は不満げだ。外へ出るのが簡単過ぎた。
ドアをくぐると、地下駐車場に出た。陸自のバスが待機していた。
「しばらくは駐屯地にいて、調査に協力を願います。全て終わったら、最初に入った噴水の所から、5人そろって出ていただきます」
バスは5人を乗せ、未明の街に出た。
「あっ、あのホテルか」
風景を見て、足利が言った。
街中に出来た最新の温泉ホテルだった。千メートル以上の深層ボーリングを行い、天然温泉が売りの所だ。
資金トラブルがあったとか、工事が中断したとか、色んな噂を聞いた。あの空洞を掘り当てたせい、と今なら理解できた。
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