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戸惑いが先に立ち慌てて地面に目を落とした瞬間、背後から声がした。
「綺麗な子でしょう」
「弓月姉さん……」
歳が一回りしか違わない叔母の弓月を雪音は弓月姉さんと呼んでいる。
弓月は雪音を通り越してその女性に近づいていった。
「二宮さん、この子が姪の雪音よ。雪音彼女は私の講義を受講されている二宮結衣さん。」
「初めまして」
結衣は長い髪を揺らしながら、すっとお辞儀をした。
「は、初めまして…」
雪音はそれにならってお辞儀をした後、どういうことなのかと弓月に目配せをした。
「源氏物語の若菜上で椿餅を食べる描写があるでしょう。椿の葉で餅をくるんだもの。講義で若菜上を取り上げた時にそういえば私の兄の家の椿は毎年美しく咲く、と言ったの。そしたら彼女その椿を見てみたいと講義の後で言ってくれたの。たがら、今日ここに来ているっていうわけ」
「何も今日じゃなくたって……姉さんとも話し合わなければいけないことだって……」
荒げた声で雪音は言った瞬間後悔した。
「あ、あの、すみません……どうしても見てみたいと私が言ったもので……」
「あ、いえ、その……」
「まあ、雪音ちゃんはご機嫌ななめのようだし、もう二宮さんも椿を満悦してもらったと思うし今日のところはもう帰りますか、二宮さん、」
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