6人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、はい……ありがとうございました」
結衣はためらいながら雪音に向かって礼をし、先をさっさと歩く弓月にならんでついていった。
雪音は慌てて追いかけたが、弓月が助手席のドアを開け結衣をリードする光景を目にして庭に戻った。
結衣と弓月の関係は本当に生徒と講師の関係でそれ以上のものではないのか、
結衣が椿と佇むあの美しい光景に結衣に一目惚れをしたこと、
様々な感情が入り乱れ、雪音の意識のないままに頬に涙が伝っていた。
涙に濡れた手で蔕ごと落ちた椿を手にした。
残虐的なほどに美しい落ち椿を手にしながら静かに泣いた。
父が亡くなった日以来の涙だった。
最初のコメントを投稿しよう!