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 目の前を、白刃が薙いでいく。地を蹴り後ろにかわした切っ先は、それでも私の前髪の毛先をわずかに刈り取っていた。と思ったのも束の間、今度は上段から重い一撃が振り下ろされる。咄嗟に鞘に収めたままだったもう一本を抜き取り、二本の剣で受け止めた。  丁寧に手入れの行き届いた、色とりどりの花が咲き乱れるエスクァーヴ家自慢の庭園。そこに、不似合いで耳障りな金属音が響く。受け止めた剣の重みに思わず顔を顰め、目の前の男を睨みつけた。 「か弱い女の子相手に、手加減なし?」 「か弱いオンナノコ? 今季の首席サマは寝惚けてんのか?」  ニヤリと二つ年上の幼なじみであるアルヴィンが笑う。弧を描くアメジストの瞳には揶揄するような色が浮かんでいた。それを打ち消すように体重のかけられた長剣を跳ね上げると、アルは勢いに勢いに負けて体勢を崩した。わずかにできた隙を見逃さず、右手の剣を横一文字に振り抜く。が、それは後ろに跳んでかわされた。  さすがと思うが、畳み込むように追う足を速めて距離を一気に詰める。鳩尾に向かって渾身の膝蹴りを一発。しかし、それも無骨で大きな掌に呆気なく遮られた。     
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